最近の文部科学省と大学運営
株式会社が経営する大学は失敗だった、一方で、職業に直結した大学のような、新大学構想。大学がだぶついている中、この新大学へ学生が流れると、名前や規模的に難しい大学は亡くなってしまうんですよね。そうすると、ポスト・ドクでだぶついている研究者の職場も亡くなっちゃう。しっかり、舵取りして欲しいですね。しかし、どうして目新しいものばかりにいって、既存の設備のメンテナンスを怠るのでしょうね。
職業教育型の「新大学」 創設へ中教審が報告案(2009年06月23日朝刊)
中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)は22日、会議を開き、職業教育に絞った「新しい大学」を創設する方針を打ち出した。教養や研究を重視する今の大学・短大とは別の高等教育機関(新学校種)。実務の知識や経験、資格を持つ教員が職業に直結する教育を担う。実現すれば、高校卒業後の学校制度が大幅に変わることになる。
これまでの議論では、新大学の名称は「専門大学」「職業大学」などが考えられている。報告案によると、新たな教育課程は、実験や実習など仕事に直結する授業に重点を置き、割合として4~5割を例示している。このほか関連企業での一定期間のインターンシップを義務づけ、教育課程の編成でも企業などと連携する。修業年限を2~3年または4年以上を考えている。
中教審での議論は、就職しても早期に仕事をやめる若者が増えていることや、かつてと仕事内容や雇用構造が大きく変わったことから始まった。この過程で、一般(教養)教育や研究に多くの時間を割く、これまでの大学と目的が異なる新たな高等教育機関の設立が具体化してきた。
方針が了承されると、文科省が制度設計の作業に入る。設置基準などの仕組みができれば、新大学への移行を希望する専修学校(専門課程)などが集まるとみられる。
ただ、現状の専修学校の制度は、私学助成対象とならない代わりに設置基準が緩く、自由な運営や教育ができる。また新大学が、地域の大学や短大などと競合する場合もあり、反発が出る可能性もある。中教審は今夏をめどに報告をまとめる方針だ。(編集委員・山上浩二郎)
株式会社立大学、はや苦境 LEC大が来年度の募集停止(2009年06月22日朝刊)
LEC東京リーガルマインド大学(本部・東京都千代田区)が、来年度の学生募集停止を決めた。規制緩和、構造改革の波に乗り、国内初の「株式会社立大学」として注目されたが、学生は集まらず、事実上、大学を閉鎖せざるを得ない状況に追い込まれた。株式会社立大学の募集停止は、これで2校目。学校経営の難しさが、あらためて浮き彫りになった。
■改革申し子、危ぶまれた前途
「(株式会社立大として)一番最初に認可を受けた大学。残念だ」。塩谷文部科学相は19日の記者会見で、LEC大の募集停止に、こう感想を述べた。
LEC大は資格試験予備校などを経営する株式会社「東京リーガルマインド」が設立した。04年春に開校し、全国14都市にキャンパスを展開した。
だが、07年1月、名ばかりで勤務実態が伴わない「専任教員」が多数いたことなどが大学設置基準に違反するとして、文科省から学校教育法に基づく初の改善勧告を受けた。LEC大によれば、これで他大学に転学する学生が相次いだ。改善勧告は大学のイメージダウンにつながり、07年度の入学生は59人。06年度の157人から激減した。入学者減は止まらず、募集を14カ所から4カ所に絞った08年度は23人。千代田区のキャンパスだけに絞った今年度は18人しかいなかった。
徐々に縮小した経過もあり、省内では募集停止決定に驚きの声はない。代わりに漏れてくるのは、「恨み言」だ。
90年代以降、大学の設置認可制度は次々と緩和されたが=年表=、特に小泉政権の03年度、大幅な緩和が行われた。「構造改革特区」(国の規制が撤廃される特別区域)で、株式会社による大学設置が可能になった。
これを受け、次々、会社立大学が開校。だが、文科省によれば、現在の6校のうち、LEC大を含め5校が赤字になっている。文科省のある幹部は「大学運営を株式会社に任せることに省内では反対論が強かったが、規制緩和の大きな波に抵抗しきれなかった」と話す。
■学生増で好調な例も
LEC大も当初は好調だった。入学者は開学した04年度と05年度は定員(160人)を上回った。法科大学院を目指す女子学生(21)は「他の大学だったらダブルスクールにお金がかかる。ここなら資格試験予備校の授業を無料で受けられるのが魅力で入学した」。
だが、3年目には定員を下回り、07年度は充足率が4割を割るなど大幅に減少。今春の累積赤字は30億円に達し、資格試験予備校など他事業部門の黒字で穴埋めしながらの経営だった。
大阪市のLCA大学院大学も昨年末、募集停止を決めた。LEC大同様に学生が集まらず、苦境が続いた。大学を運営する「株式会社LCA―I」(東京都台東区)は当時、取材に「経営が非常に厳しかった。見込みが甘かった」などと述べた。
一方で、順調に学生を増やす会社立大学もある。
東京・秋葉原にキャンパスがある「デジタルハリウッド大学」は05年に開校した。受験倍率は2~3倍という人気を保ち、2年前、定員を190人から250人に増やした。
アニメやコンピューター・グラフィックス(CG)、ウェブなどに特化した教育内容。CGデザイナーやアニメ番組プロデューサーなどを講師にして、制作現場で即戦力になるクリエーターを養成する。
担当者は「利益を追求しながらも、利用者にどれだけよいサービスを提供できるかという点で努力してきた。会社なので、素早く意思決定し、実行できる利点もある」と話す。
通信制のビジネス・ブレークスルー大学院大学(本部・千代田区)も倍率が2倍程度が続き、定員を増やした。受け入れるのは社会人や経験者のみで、学生の平均年齢は36~38歳。授業はインターネットで受ける。伊藤泰史副学長は「特区の活用で、校舎や敷地といった設備に費用をかけず大学をつくれた。その分、授業など教育内容に投資できた」と話す。
■厳格化へ「揺り戻し」の動きも
大学経営自体が厳しい中、塩谷文科相は、会社立6校のうち5校が赤字という現状に、「一概に株式会社立がダメということではないが、問題意識は持っている。今後十分に検討すべきだ」と語った。
実際、中央教育審議会大学分科会が今月15日に出した報告では、LEC大などを認めた規制緩和の反省もあり、設置認可の厳格化の方向性が打ち出されている。教員の要件や施設など申請書類をもとに、より厳しく審査する考えが盛り込まれ、これまでの「揺り戻し」の内容になっている。
グロービス経営大学院大学(本部・千代田区)は、株式会社立で誕生したが、08年に学校法人に変わった。理由は東京、大阪に続き、名古屋で開校するためだ。学校法人になれば、自治体単位で特区認定を受ける必要がない。鈴木健一事務局長は「より公益性の高い団体と認知されるという利点もあり、学校法人に変更したが、株式会社立だからといって不利だと思ったことはない。この制度がなかったら、そもそも学校経営に参入しなかった」と話す。
学校を設立した会社でつくる学校設置会社連盟の山口教雄事務局長は「企業が学校をつくる制度自体に問題があるという声が出るだろう。しかし、独自の取り組みで成果を上げる学校もあり、腰を据えた議論が必要だ」と話した。
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